洗顔後は、パサつく、かさつく、突っ張るといった経験はありませんか?
これは、お肌の表面わずか0,03mmの角質層が潤いを失うことが原因です。
そんなお肌の潤いを守るのは
細胞間の保湿成分、セラミド(角質細胞間保湿因子)
そして、肌表面を覆う皮脂膜(皮脂による最も外側のシールド)
でした。
この内、洗顔によって簡単に落ちてしまうのが
皮脂膜
です。
そして、洗顔によって失われた皮脂膜を補充するのがオイル化粧水です。
オイル化粧水の効果
オイル化粧水は皮脂膜を作るための成分です。
ですから、人間の作る皮脂膜と期待できる効果は全く同じと言えます。
すなわち、
皮膚や毛髪の環境を弱酸性に保つことで、弱酸性を苦手とする雑菌を近寄せない角質層の潤いを閉じ込める保湿効果
です。
ですから、皮脂膜を失った状態のお肌では、次の潤い因子
細胞間の保湿成分、セラミド(角質細胞間保湿因子)
が無防備な状態になってしまい、この間に受けたダメージは、セラミドへの直接のダメージとなってしまいます。これを防ぐためにオイル化粧水で失われた皮脂膜を形成する訳ですが、そのメカニズムを知ることで同じオイル化粧水でもその種類を選ぶことが出来るのです。
このメカニズムを知るために必要なのが、そもそも皮脂膜がどう作られているのか?
を知ることです。
皮脂膜はどう形成されるのか?
皮脂膜は、毛穴から抽出された皮脂が、お肌に住むアクネ菌などの常在菌によって分解されることで形成されます。
では皮脂とは? というと、
- 油脂:トリグリセリド 4割程度
- ワックス:ワックスエステル 3割程度
- 炭化水素:スクワレン 2割程度
で形成されています。
ちなみにこの形成は、あくまで平均値で、年齢や性別、環境によって、かなり変動するようです。
かなり化学的な成分分類になってしまいましたが、ここでは化学的知識はそれほど重要ではなく、ただややこしいだけなので割愛します。詳しくは皮脂膜とは?にて記事にしていますのでご参照ください。
これら三種の皮脂が汗と混じり常在菌によって徐々に分解されることで、油脂からは遊離脂肪酸(弱酸の要因)が、スクワレンなどからコレステロールなどがそれぞれうみだされ、元々の油脂、ワックス、炭化水素とも混じり合います。
こうして、ある程度分解され、弱酸となったうえで、すべての成分が混じりあったものが初めて皮脂膜という訳です。分解(酸化)がすぎればトラブルのもと、分解が無くても役を無さないというわけですね。
ですから、皮脂膜はバランスと、『古くなったら洗浄』、『洗い過ぎも良くない』といった、付き合い方が大事と言う訳ですね?
オイル化粧水の成分は?
オイル化粧水の成分は、体から分泌される皮脂と全く同じです。
すなわち、
- 油脂:トリグリセリド
- ワックス:ワックスエステル
- 炭化水素:スクワレン
のいずれか、もしくはそれぞれが混じったものです。
ほとんどの場合、オイル化粧水は何故か純粋なものが多いです。
あれもこれも、いろんなものが入りがちな化粧品業界では、珍しい且つ有り難いですね?
話をもどしましょう。オイル化粧水の成分から言えることは、あらゆるオイル化粧品はこの三種に分けることが出来るのです。
そして、その使用感と酸化のしやすさに差が生まれます。
オイル化粧水のうち、
油脂は酸化しやすい、ワックス、炭化水素は、酸化しずらいという長所があります。
皮脂膜が匂いや痒みといったトラブルを生み出すのは、皮脂膜中の油脂が分解、酸化され遊離脂肪酸を生むことが要因でした。
つまり、油脂を含まないワックスと炭化水素は匂いや痒みとは無縁、安心安全に角質層の保湿効果を得られる!といえるわけです。なので、純粋なワックス(成分名は、ホホバ油)炭化水素(成分名はスクワラン)であれば後は使用感!で選べばよいという訳ですね。
対して、判断が分かれるのは『油脂』ですね。
オイル化粧品の王道『油脂』とは
油脂は、素晴らしい肌触り、肌伸びが好まれ、古くから使用される成分です。
ツバキ油、マカデミアンナッツ油といった植物油が有名です。
実際その他のオイル化粧品、ホホバ油やスクワランとは使用感に一線を画すものがあると私個人は思います。
どっちの方が良いか?は個人差があると思いますが、酸化しない安全な炭化水素やワックスを差し置いて、油脂が今も根強い人気があるのは、この独特な使用感にもあると言えると思います。
そもそも、油脂の弱点『酸化』は一見弱点とも言えますが、皮脂膜の長所、弱酸性は酸化によって初めて促される効果です。
もちろん、行き過ぎた酸化は臭う、痒みといったトラブルの元となるため、注意は必要ですが、あえて避ける必要はありません。そもそも、放っておいても人体は油脂を分泌しますからね?どっちにしろ、過剰な酸化は人間にとって無視できない問題な訳で、その為に、私たちは洗浄を怠らない訳です。
そんな背景を持つ油脂ですから、皮脂と皮脂不足を解決するのに、選択を避ける必要はありません。
ただ、同じ油脂でも例えば、ツバキ油とマカデミアンナッツ油で酸化のしやすさ、使用感が違うといった差があります。もっと言えば、同じツバキ油でもメーカーが違っただけで性質が変わってくるといったこともありえるのです。
これは、油脂を構成する油脂成分(トリグリセド)の種類と配分に違いがあるからです。
その原因は、何の油か、更にはその油の抽出方法、抽出時期、植物の育て方などなどによって当然かわってしまうからですね。
同じみかんでも味が違うのと同じことです。
油脂の種類と酸化しやすさ
使用感については、実際に使用してみなければなんともいえません。個人差が激しいですからね?
ただし、『酸化しやすさ』はある程度材料から想像がつきます。
モモやイチゴは、みかんに比べて明らかに足が速いといったことをイメージしていただけると分かりやすいかもしれませんね。
簡単に酸化しやすさを比べる方法は、油脂に含まれるトリグリセリドの種類のうちオレイン酸、リノール酸の配合割合に注目することです。
有名な油脂のトリグリセリド配分の平均値を表にまとめました。
オレイン酸 | リノール酸 | その他の主要脂肪酸 | |
ツバキ油 | 85% | 5% | |
シア脂 | 50% | 6% | ステアリン酸40% |
オリーブオイル | 70% | 10% | |
マカデミアンナッツ油 | 60% | 3% | バルミトレイン25% |
アルガンオイル | 50% | 30% | |
アンズ核油 | 70% | 20% | |
アボカド油 | 65% | 15% | パルミチン酸10% |
アーモンド油 | 65% | 20% | |
馬油 | 35% | 10% | パルミチン酸25% リノレン酸10% |
※1 ステアリン酸、バルミチン酸は飽和脂肪酸と言って、オレイン酸より遥かに酸化しにくい成分で、皮脂にも含まれている成分です。
※2 パルミトレン酸は、不飽和脂肪酸でオレイン酸と同列の酸化性をもちます。
※3 リノレン酸はトリ(3つ)不飽和脂肪酸とよばれ、ここで紹介した脂肪酸のなかではもっとも酸化しやすい脂肪酸です。
オレイン酸リノール酸は共に、不飽和脂肪酸といってトリグリセリドのなかでも酸化しやすいという、共通の特徴があります。特にリノール酸は、単なる不飽和脂肪酸ではなく、ジ不飽和脂肪酸(2つの不飽和脂肪酸の意味)とよばれ、オレイン酸よりも遥かに酸化しやすいため、リノール酸の割合が多い油脂は酸化しやすい、トラブルを引き起こしやすいといえます。実際、リノール酸の割合が多い油脂は評価が低い傾向にあります。ただし、リノール酸は実際の皮脂にも多く含まれていますので、過剰に嫌う必要は無いです。
なので、油脂は皮脂と同じ!酸化にはどちらも注意が必要で
とにかくつければ良い! というものではなく
リノール酸の配合の多い傾向にある原料を配合された油脂を使う場合は余計に注意が必要!
ということに注目しましょう。
皮脂膜を補うオイル化粧水
いかがでしょうか?一口に化粧水といっても、
保湿バリア化粧水(オイル化粧水)
ダメージ補修化粧水(セラミド)
に分けることができその上、オイル粧水は更に
ワックス(ホホバ油)
炭化水素(スクワラン)
に分けられ、さらに油脂はその材料によって
マカデミアンナッツ油
などに分けることができ
オレイン酸とリノール酸の配合割合によって酸化しやすさ、使用感が変わってくる。
というのが、オイル化粧水のまとめとなります。かなり深い話ですよねw
もっと簡単に言いましょう。
オイル系化粧水を選ぶ場合、使用感で選ぶ!
選んだものが『油脂』ならば、酸化します。
肌に残しつづけて良いものではない! ことを意識して使用しましょう。ということです。
では、肝心の結局どのオイルが優秀なのか?というと、一口には言えないのが現状です。
なぜならば、皮脂、皮脂膜の役割は、研究対象になかなかなることが無いうえ、とっても神秘的な存在なために未だ明らかにされていないからです。
ですから、皮脂や皮脂膜の未知の効能を取り入れるのであれば、皮脂膜本来の成分すべてを取り入れる必要があるわけです。なので、皮脂膜の優秀さをすべて得るには
ワックス(ホホバ油)
炭化水素(スクワラン)
すべてを少しずつ利用する、もしくはすべて配合されたオイル化粧水を利用するが正解ですよね。
とはいえ、そうすることでどんな効果や弱点があるのか?もまた未知なのです。
ただし、どのオイルを選んだとしても、一定の保水効果、バリア機能の向上効果は認められていますから、やはり個人の使用感に注目して選ぶのがオススメです。
ちなみに、わたしのお気に入りは油脂の
ツバキ油
です。