『毛穴』とは、皮膚上に点々とあるサヤのような穴です。目立ってしまうと、見栄えが悪くなる嫌われものですよね?
ところが、毛穴は、お肌の健康とキレイを守る大切な機関のひとつなのです。
毛穴にはおもに、、、
- 毛を生やす事
- 皮脂を分泌すること
- 汗を分泌すること(汗は毛穴だけでなく、お肌の汗腺からも分泌されます)
といった働きがあります。これらの役割をすべて果たすことで総合的にお肌を守る訳ですが、その仕組みを段階をおって見ていきましょう。
毛穴の中の皮脂腺から分泌された皮脂は、後から産まれる新たな皮脂におされ、毛穴から押し出されます。
こうして、押し出された皮脂は、お肌に住む常在菌に分解され、汗と混じることで皮脂膜と呼ばれる成分に変化します。
この皮脂膜が、毛穴から生えて来た毛髪や毛、そして、お肌の表面の角質層などを包み込み、私たちの体の表面を弱酸性に保ってくれます。
私たちにとって、有害な細菌の多くは、この弱酸性という環境が苦手です。ですから、皮脂膜の弱酸性は、細菌を寄せ付けないシールドとなるのです。
逆に、この弱酸性を好み、皮脂膜とともに弱酸性の環境を整える菌が常在菌たちです。
ですから常在菌は、私たちのお肌にすんでいる菌たちの事で、私たちと共生の関係にあります。
このように、いくつかの経緯を得て、やっと作り上げられる弱酸性という環境は、私たち人類が、長い歴史のなかで知らず知らず獲得した特別な防御環境であり、毛穴は、単なる穴ではなく、その弱酸性の環境をつくる皮切りとなる大切な器官だったのです。
スキンケアを選ぶにあたって、もう1つ知っておきたい大切な毛穴の習性があります。
先述のように、皮脂はお肌を守る大切な皮脂膜の材料となる成分です。けして、新陳代謝の結果、排泄される単なるゴミではありません。
だからなのでしょう。徹底した洗浄によって、お肌から皮脂を洗いきってしまうと、毛穴は慌てて皮脂の生成を開始するのです。しかも、驚くべき事に、こうした徹底的に洗う事を習慣づけていくと、一回に生成される皮脂量が徐々に増加していくといったデータがあるのです。
現代の日本人は、洗浄の回数の上昇、除菌意識の向上などにより、良かれと思って、過剰な洗浄を施しがちです。その結果、一昔前の日本人に比べて、皮脂の分泌量も多い傾向にあるそうです。
お風呂文化の始まり、銭湯の登場が昭和初期、お家に個別のお風呂が普及したのが1970年代、どうですか?意外と、歴史は浅いですよね?洗浄意識は、近年一気に向上した裏付けとも言えますよね?
こうして産まれた矛盾が
- 皮脂を徹底的に落としたい『頭(私たち)』と
- 皮脂で体を守りたい『体』
です。
脳は無知、体は利口とは良くいったもので、体はほっといても正しい働きを知らないうちにやってくれますが、私たちの自我、理性的であるはずの脳は、間違った知識や思い込みによって、平気で訳の分からない負の働きをしてしまうわけですね。
皮脂の分泌量の変化は、『洗う』を変えるスキンケアチェンジに伴いがちな現象です。
例えば、洗浄成分を強めのものにかえれば、体は皮脂が足らない!と感じて、皮脂の分泌量は増加します。
逆に、洗浄成分を弱めなものに切り替えれば、体は満足して、皮脂の分泌量は減ります。
ただし、体は、洗浄剤を変えた事なんて知りえませんよね?あくまで、長期的に見た皮脂量によって、分泌する皮脂量を調整してくれています。ですから、洗浄剤を変えたその日から、てきぱきと対応して皮脂量をかえる事は出来ないのです。
スキンケアを変えるとき、長い時間を掛けながら、体は変化し続けます。
例えば、高洗浄力の洗剤からいきなり、低洗浄力の洗剤に切り替えると、初めのうちは皮脂の過剰な分泌量が続くため、余計に洗えてないな、、と感じる事が、多いのです。
そんなとき、この特徴と矛盾を思い返す事で、正しい判断が出来るようになります。
毛穴の仕組みと役割は以上です。ここをしっかりおさえた上で、いよいよ毛穴の黒ずみの正体についてみていきましょう。